Yちゃんに、お願いされた。
「あのね、ブッセを持って帰ってもらえないかな?」
あら!そんなこと、断るワケがない!
「喜んで、いただくよ!ありがとう!」
「実は、実家の父が、亡くなった母の仏壇に、毎日ブッセを供えていてね。
毎日一個ずつ。母が好きだったからって。
前の日に供えたのは、そのまま冷凍庫。
父は甘いモノは食べないから。
冷蔵庫がいっぱいになると、クール便でうちに送って来るの。
うちの冷凍庫もいっぱいになってしまって…。
もう何年も続いているから、うちの(独立した)子供達も誰も食べない。
冷凍してあるから大丈夫なんだけど、印刷上は賞味期限が思い切り切れてるから、他所様にはあげにくくて…。
私一人で頑張って食べてるけど、全然なくならない。
他のモノを供えたら?って言うけど。
父は、母が好きだったからって絶対変えないし。
父の気持ちを思うと、私には捨てられないし。
手に余ったら、捨ててくれていいから。
「頼めるかなぁ…?」
なるほど。そういうことね!
Yちゃんのお母様が亡くなって、確か7〜8年経つはず…。そうかぁ、毎日…。
何かが胸にこみ上げてくる。
任せといて!
とりあえず50個位受け取った。
今日は中学生と高校生が来るから、
事情を話して了解したら、貰ってもらおう!
「あのね…、カクカクシカジカ…」
みんな快く5、6個ずつもらってくれた。
後で保護者の方から、
お礼と一緒に「素敵なご夫婦ですネ」のコメントまで届いた。
ありがとうございます。私もそう思います。
Yちゃんに報告したら、返事が来た。
「ありがとうね。面倒かけて…。
母が急死してから、父はすっかり弱ってしまって。
オレは、K子のためだけに生きてきたって。
家事でも何でもできる父なのに、食べられない、眠れない、でボロボロになっていくのが、見ていて本当に辛かった。
今も、朝昼晩と仏壇に手を合わせてる。
写経とかしちゃって。
父は買い物に行くと、潰れたらいけないって、そっとカゴの上にブッセを置くの。
それを知っているから、とても捨てたりなんかできなくて…。」
私の知っているお父様は、大企業の支社長まで務められた、頼もしくて温厚な方。
かなり気落ちされているとは聞いていたけれど…。
返事を読みながら、久々に涙がこぼれた。
奥様を供養し続けるお父様、本当に素敵だと、思う。
人が人を想う気持ちに、ただ感動。
こんなに美しいものを知って、今日は本当にいい日になった。
生きていると、どうにもならないこと、理不尽なことは避けられない。
弱い私は、すぐに心が折れそうになってブーブー言ってしまう。
でも…、心の中では、明日はいいことがあるって信じて、一日を終えることにしている。
いや、無理してでもそうしている。
天気だって、雨の日も、風の日も、晴れの日もあるもんね。
誰かが私のの支えになって、私も誰かの支えになれているはずだから。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。